骨盤ベルトWing×Walkerの開発秘話とその経緯

佐藤欣也
日本ペインクリニック認定専門医、日本医師会スポーツ医、労働衛生コンサルタント


まず、腰についてできるだけ詳細な分析をすることから始めました。 ペインクリニックでは、局所麻酔剤を使った各種のブロックで痛む部位を区域的に麻酔することが、治療にもなり、腰痛部位の診断の糸口にもなっています。
そこでブロックを使って、臨床解剖学で知覚神経の多く分布している部位でどの程度その部位が痛みに関係するか検討しました。

 

また、歩行や立つ、座るという動作がどんな静的な筋肉で支えられているか、経年的変化や使わないでいるとどのような姿勢になるか、その場合どの筋肉をサポートすればいいのか検討しました。ここまで10年以上の検討を重ねました。 

 

試作品開発で苦労した点は、三つあります。
一つ目は、腰は固定と動作が同時に起こる点です。例えば歩く時、片方の脚を前に出す方は動かしているし、残っている脚の方はその間は充分に腰が固定されている必要があります。


二つ目は、痛みを感じる部位に触らないで腰を安定化できるかという点です。そこでU字型のステーを仙骨後面に正中線上に固定できるよう各方向性のベルトで固定しながら、各ベルトに力がかかった際に受ける場所としました。もちろん腰痛原因部位である圧痛点には触れない構造にしてあります。


三つ目は、その各方向性を持ったベルトのバランスです。作り手でもある縫製会社さんと二十数回にも及ぶ試作の中で縫製の強度とベルトや生地の素材の調整を行い40kgもの反復運動に耐える衣類付きベルト構造としました。そして姿勢には、X脚とO脚があることから、股関節の向きを調整できるようベルトの強弱を各サイズ毎に吟味しました。


 

ハイテクプラザ技術支援センターでベルトの強度の最終チェックをし、試作品は300体も作られ、リハビリテーションの患者様方からその手応えを得て今日に至っております。
現在、骨盤安定を謳ったガードル型の仕様に比べ、圧力が調節できるような仕様にしたのも意味があります。骨盤の形は千差万別なので固定性と可動性を両立させるには、ベルトで細かい調整ができないと充分な力がかかりにくくなってしまうからです。

 

履かれてみると判りますが、機能性を重視した作りなので衣類装着に手間がかかると思います。それでも、座位から歩行姿勢になる時や歩行時にも後ろから押された感じを味わうと着けるのは止められなくなるでしょう。

 

くれぐれもトイレの近い方は気をつけてください。腰の機能を重要視した結果、履いたり脱いだりは少し時間がかかります。

また、下肢血流が悪い方は使用が制限されたものとなるかもしれません。
履いた後で下肢の拍動が少なくなるようでしたら、装着はしないでください。
機能を重要視している分、他に与える影響も大きくなっているからです。